朝、代表がスマホで Instagram の下書きを確認していました。リール動画の最後のひと言を聞いて、手が止まります。
「スマホの、横わみだし。」
わみだし。何がわみだしたんや。
「は」を、「わ」と読んでいた
正しくは「横はみ出し」。サイトを作り直したとき、スマホの画面で横にはみ出していたカードを見つけた、という一文です。声を当てているのは、文章を読み上げる AI(VOICEVOX)。ふだんはほとんど間違えません。
なぜ「わ」になったのか。実際にどう読んだのかを、AI 側の記録で確かめてみました。

「はみ出し」だけなら、ちゃんと「ハミダシ」と読めます。ところが前に「横」が付くと、「横は/みだし」と区切ってしまう。「横は」を「横について言えば」の「は」だと受け取ったわけです。この「は」は、日本語では「わ」と読む決まりがあります。
機械からすると、筋は通っています。「名詞+は」は、日本語でいちばんよく出てくる並びのひとつです。確率で言えば、そっちに賭けるのが正解。正解やけど、不正解。
日本語は、切れ目から当てにいく
英語なら、単語と単語のあいだに空白があります。「The card sticks out」と書けば、どこで切るかは最初から決まっています。
日本語には、その空白がありません。「スマホの横はみ出しも見つかりました」は、文字がただ並んでいるだけです。読み上げる AI は、まず「どこで切れるか」を当てて、それから一つひとつの読み方を決めます。
しかも日本語は、同じ字でも読み方が変わります。
- 「は」は、字としては「ハ」、助詞なら「ワ」。「へ」は「エ」、「を」は「オ」
- 漢字は一字に読みがいくつもあります。「生」なら、なま・せい・しょう・いきる
- 同じ「今日」でも、「きょう」と「こんにち」
英語にも「read(リード/レッド)」のような読み分けはあります。ただ、切れ目を探すところから始まるぶん、日本語の読み上げは一段むずかしい。人間は意味で読んでいるので、そのむずかしさに気づきません。
直したのは、1文字
直し方は簡単でした。「横はみ出し」を「横のハミ出し」に。「の」で区切りをはっきりさせて、カタカナで一語にしただけです。

依頼は、スマホの承認画面から1行。修正の仕組みが受け取って、約40秒で作り直しが届きました。かかった AI の費用は3円ほどです。
ここで話が終わればきれいなのですが、もう一つありました。作り直された動画は、声は直っていたのに、映像が別の画面に入れ替わっていたのです。サイトの話なのに、経費の画面が流れていました。直したら、別のところが外れる。 これも、人が見て気づきました。元の映像のまま、読み方だけ直した版に差し替えています。
それでも、全部は任せない
AI の声は、ほとんど正しく読みます。だから、つい全部を任せたくなります。でも、聞いた人は内容より言い間違いのほうを覚えてしまう。お店の名前で発信するなら、なおさらです。
私たちが「下書き → 人が確認 → 投稿」の流れを崩さないのは、このためです。確認にかかるのは数秒。直すのは1文字。今回見つけた読み方のクセは、次から同じ間違いをしないよう記録に足しました。
AI は、言葉のほとんどを正しく読みます。残りのわずかな取りこぼしは、人の耳でしか拾えないことがあります。AI に9割を任せて、人は数秒だけ確かめる。その数秒を削らないことが、いちばん安い品質管理だと思っています。