お店の数字で、いちばん遅れて分かるのが「今月いくら残ったか」です。
売上は締めれば出ます。人件費もシフトを見れば見当がつきます。でも経費は、レシートが財布とレジ下とカバンに散らばったまま、月末にまとめて封筒へ。そこから電卓を叩いて、やっと分かる。分かったときには、もう手の打ちようがない月末です。
予約管理システムは売上を持っています。シフト管理は人件費を持っています。同じひとつの土台の上にあります。あと経費さえ分かれば、引き算ができる。 そう思ったのが始まりでした。
決算はやりません、と先に決めました
会計と名の付くものを作るとき、最初に決めたのはやらないことのほうでした。
税務申告に耐える帳簿は、電子帳簿保存法・インボイス・消費税の区分まで面倒を見ないといけません。そこを中途半端に作ると、お客様の申告が狂います。 私たちが背負っていい重さではない。
だから作ったのは管理会計だけです。売上 − 人件費 − 経費で、今月いくら残ったか。それだけ。決算の書類はここからは作りません、と画面の一番下にも書いてあります。
「会計ソフトを作りました」のほうが、かっこよく言えたんですけどね。

レシートは、撮るだけにしました
経費を入れる手間をどう消すか。ここがいちばん考えたところです。
答えは単純で、スマホで撮る。それだけです。管理画面の「レシートを撮る」を押すと、その場でカメラが開きます。アプリを入れる必要も、どこかにログインし直す必要もありません。撮った写真はAIが読んで、日付・金額・消費税・支払先・インボイスの登録番号まで拾います。
ただ、ここで大事にしたのはAIを信じないことでした。
読み取った数字は、必ず機械で検算します。税込金額に税率を掛けて割り戻した額が、書いてある消費税と一致するか。日付が未来になっていないか。登録番号がTで始まる14桁になっているか。合わなければ、もう一度別のAIに読み直させます。 それでも合わなければ「要確認」として人に回します。
モデルを大きくするより、検算を足すほうがよく効きました。
勘定科目だけは、AIに決めさせていません
意外に思われるかもしれませんが、どの科目に入れるかはAIに聞いていません。
代わりに使っているのは、同じ支払先の前回の科目です。一度でも人が「これは消耗品費」と直せば、次から同じお店のレシートは自動で消耗品費に入ります。二度目からは料金もかからず、しかもAIより正確です。
お客様のチャットボットを育てるのと、同じ考え方でした。人が一度教えたことを、覚えておく。 それだけで、たいていのことは足ります。

1枚いくらか、測りました
AIに読ませる以上、お金がかかります。いくらかかるのか、実際に測りました。
小さめの画像で 0.40円。スマホで撮ったままの3MBの写真で 0.46円。40倍のファイルサイズ差が、値段では1.15倍にしかなりませんでした。AI側が写真を縮めてから読むので、大きく撮っても損はしません。
月に100枚撮っても46円です。検算が合わずに読み直した1枚でも1.5円を超えません。
しかもこの金額は、画面に出しています。 1枚ごとに「この1枚 0.46円」、月の合計も別画面に。Consoleを見に行かないと分からない費用は、結局だれも見ません。
レシートを財布から出して、撮る。 それだけで、その月の数字が動きます。私たちが減らしたかったのは金額ではなく、月末にお店が思い出さないといけないことの数でした。数えるのは、機械のほうの仕事です。